人によって違う筈だけど、大体「楽園」の枕詞といえば「南洋の…」だよねぇ?
でもきっと住んでみると案外大変、そんな気がする。嵐に津波、暑い国には猛獣や毒のある生き物も多いし。その土地に暮らすとなると、楽かどうかはハテナに思えたりして。
「ビーチ」という、映画化もされた小説を読んで「地獄の黙示録」を思い出したのは、僕だけだろうか。大航海時代、タヒチを目指した画家たち、その頃と大して変わらない幻想が感じられたんだ。外部から「楽園」と称賛しながら入ってきて、勝手な幻想を自ら破壊するという矛盾。「ビーチ」でも映画のためにヤシの木を植林しようとして問題になってたけど、そういう傲慢さも根っこは同じだと思うんだな。
だから「楽園」というよりは憧れの場所とか、お気に入りの場所として、ロー・インパクトな姿勢で話しましょう。
では僕らが「楽園」だと思ってる所の人が憧れる「楽園の楽園」って、どこら辺だろう? …て考えると、たとえば(ニホンは豊かだし便利で良さそうだ)なーんて、思ったりしてくれるのかもなぁ。隣の芝生が青く見えるっていうか、昔話の「鼠の嫁入り」みたいになってきた。
と、前フリで遠投しといて強引だけど南房総。
好きなんだなぁ、近いし暖かいし海も山もある。それに、渋滞も少ないし。さすがに夏は避けられないけど、伊豆半島に比べれば余裕。
ボディボードをやってました。たった2年間、しかも夏場だけ。本当は今でもやりたいんだけどさ、大勢でってのは苦手だし波の取り合いも面倒で。僕は直線ボーダーで充分なのだ。でもさすがに一人では行き帰りが退屈、それに一人で入るなんて失礼過ぎる。地元にも、海に対しても。
そんな訳で、結構ご無沙汰してる。当時お気に入りのポイントは、南房総の先端にある遊泳禁止エリア。防砂林の向こうに広がる絶景が忘れられず、波乗り抜きで見に行ったりもした。風向きのせいで滅多に良い波が立たないので、わざわざ南下して来るサーファーも少ない。海水浴客もいないし静かなのがまた良いんだ、ただし便所も何もないけれど。
そこから、しばし北上した所の漁師町も最高。波乗りの後、この町の銭湯に浸かり夕食を食べてた。老人会の入浴施設の隣に苔むした神社があってさ、風呂上がりに涼んでると和む。とある有名な写真家の美術館も近くて、開館と同時に庭先でボーッとしてるのも、午前の和みには最適。
食べるのは、探求心が薄いので3カ所しか行かないんだな。
僕の好きなウィルキンソンのジンジャーエールを置いているレストランでなら、ピザやパスタ。海岸沿いの道路に面した、ごまだれざるうどんの店も良い。駅から漁港に向かう道にある、偉大なる青という小洒落た宿の朝食に出るバナナ・フレンチトーストも絶品だ(主人の言い草は鼻に付くが)。
ピザとパスタの美味しい店も知っている。町よりは浜に近いし眺めも良いけど、軽自動車でしか行きたくない道の細さと、軽自動車では馬力が不安な急坂なので行く気になれない場所にあるのが難点。
都会での運転は気が張って疲れるけど、この辺の町から町へと転がすドライブって逆に気がほぐれて気持ち良いんだ。クーラー切って窓全開、時速20キロの気軽さで。BGMは、やっぱビーチボーイズでしょ。古すぎ?
だからこそ似合うんじゃないの、レイドバックしてて。「パメラ・ジーン」とか「ダーリン」あたり流しながら転がしてごらんよ、だまされたと思ってさぁ。
平成15年7月16日
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