2003年07月19日
08*雨を見くびるな
冬のうちから「今年は冷夏か?」とは言われてたけれど、梅雨寒ってのは厄介だな。低温多湿、特に夜は寝苦しくて朝になると眠りが浅くなるから嫌になっちまう。僕は六月生まれだから雨の味方でいたいのに、湿気が多けりゃ不快にもなるってモンだ。
雨はキライ! って言う人、結構いるよね。特にスーツみたいな格好で通勤してたら、当然そう思うだろうな。僕も経験ある。気張って高価な靴を買ったのに、濡れちゃうと手入れが面倒なんだもん(防水ケアも含めて)。欧米と日本の気候は違うのに、ねぇ?
メキシコ南部の町、カンクンに行った時の話。
ちょうど雨季の始まりで、一日一回はスコールがあったんだ。ハワイで浴びたのなんか目じゃないんだから、いきなり集中豪雨でさ。何の前触れもなく、まるで天の水栓が抜けたような怒涛の有り様よ。そんで10分もしないうちに、また何事もなかった顔して雲一つない青空に元通り。
その日も昼ごはんの最中に、突然やって来たの。「ジュビア!」と叫んで外に駆け出した子供たちとドシャメシャに浴びて、ふざけてお互い水たまりに転がし合って大騒ぎしたんだ。もう完全に子供に戻ってたもんなー。
それがね、信じられないほど快感だったんだわ。単に(童心に返った)って事かもしんないけど、頭の中に文字が浮かんできたのよ。“雨は浄化する(クレンジング)”ってさ。妙な話なんだけど、本当にそういう感じだった。空から降って来るピュアな水を浴びる行為は、心を洗い流す象徴なんだ…そういう意味のこもった言葉だったの。
ただ、それを感じられたのは(暑い国だったからだ)っていう気もする。日本だと、真夏でも雨に濡れると鳥肌が立っちゃうからなぁ。それでも確かに気持ちは良いんだけど、段々と捨て犬の心境になっちゃったりして。あんなにスーパー・ポジティブな感覚でいるのは無理だろうと思う。
今も時々は雨に打たれるんだ。濡れても困らない服で、家まで歩いて帰れる時はね。そしたら少しぐらい寒くても、家に着いたら温かいシャワーが待ってるから。寄り道したり、電車に乗ったりは出来ないけど。
そういえばプールの監視員してた時も、夕立とか来るとハイになったっけな。暴風雨の中、高笑いしながら排水口にカッパ掛けしてたりした(カッパ=T字型の大きなゴムべら状の道具)。台風とか嵐って、なんであんなにウキウキしちゃうんだろう?
台風って、大気の状態がカミナリが発生する時みたいなんだってね。空気中の電磁気が不安定になってるとか…? あぁっ、ダメだ詳しい事は忘れた。とにかく荒天で浮かれ気分になってくるのは、そういう理由らしいんだわ。
科学的かどうかは置いといて、僕は(なんか説得力ある)と思ったんだ。満月の夜になると云々…って話があるじゃない、それに近いんだよね。根拠が大事な訳じゃなくて、感覚的にさ。
TV中継で、よく岸壁で揉みくちゃになってるレポーターを観るよね。あれ、やってみたいって思ったりしない? 傘は逆に向いちゃうし合羽は脱がされそうだし、とっても危なっかしいんだけど。メガネはすっかり曇ってるし髪形はバーコードになるし、非常にカッコ悪いんだけど…でも憧れちゃうんだよなぁ、ほんのちょっとだけ。
もしかすると、荒れてる海に行くサーファーも「ビッグ・ウェーブ狙い」だけじゃないんじゃないかな。嵐にワクワク感じてる気がするけど、違うかな。
僕はとてもじゃないが、大波を乗りこなすなんて無理。サーファーじゃない以前に、ボディボードだって初心者レベルのままだし、それも長い事やってない。
だけど一度だけ、うねりの強い日に乗った事がある。せっかく来たんだし、台風は沖縄よりも遠かったからって油断して入っちゃったんだ。うねりの底にくると、波の壁に囲まれた気分だったよ。陸がどっちなのか見えなくなるわ、掘れてくる波には巻かれそうになるわでゾッとしたのを覚えてる。溺れる心配はしてなかったけど。
でも意地になって乗りまくってると、アドレナリンが脳みその隙間(?)に「チューッ」って感じで出てきてね。五感が研ぎ澄まされて出力120%状態、異様にハイになってたと思う。ま、今となっては泳ぎにも自信ないから、そんな気は二度と起きないだろうな。
平成15年7月19日
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