話にのめり込むほど本筋から離れてゆく…というのも変な話だけど、僕にとっては優れた物語の印しなのね。それが。自分が、まるで(物語の内側に存在してるような感覚)になるんだと思う。いかに荒唐無稽な状況でも、違う位相で現実を見ている感じなんだな。そんな時の些細な頭の働きが、いつもと違う現実の見方をしてて面白いのよ。
僕は直感みたいなのって、多分ほとんど働かないのね。ま、覚えてないだけかもしれないけど。
唯一の直感は、何かが終わる感じだな。たとえば仕事ね。色々バイトしてるうち身についたのかな、何の前触れもなく電流のように来るのよ。「ビビッと」なんて月並みだけどさ、それで(あー、もう潮時なのかぁ)って急にシミジミしちゃったりしてね。
昔、某TV教育番組で「はたらくおじさん」てのがあったんだ。小学2、3年頃の社会科の授業で見せられてたんだけど、様々な職業を紹介するような内容だった。僕はデザイン科の高校を出て写真のスタジオに入ったんだけど、そこで(自分は遊び幅がなさ過ぎる)って思い知ったのね。やっぱ専門学校とか大学から来た人って、余分な幅がある気がしてさ。で、スタジオを辞めた僕は「はたらくおじさん」になる事にしたんだ。
色々な職種と勤務地で働こうって決めて、だから一つの職場で長く勤めようとか思わなかったの。たまに全然なじめない場合もあったけど、たいがいは仕事を変えるごとに働く楽しさが増していく感じだった。それは自分が気持ち良く働くコツと、そのための要素をつかむ能力が上がっていったのかもしれないね。
そんで25の頃(もういいかな)と思って就職したのね、いわゆる営業職。でも先輩から、よく「どんなに辛くても我慢すれば、将来は報われるから」というような事を言われてさ。とても良くしてくれる人だったんだけど、そうしても腑に落ちなかったんだよ。部長も社長も、ちっとも報われてなかったんだもん。
アシスタント時代に、中堅のカメラマンが言っていたのね。「フリーでやってこうとも思ったが、家庭もあるし収入が不安定だから」って。それで大志を捨ててチラシのセール品を撮り続ける生活を選んだ、にしても。あんな目の人生は(しちゃダメだ)と思ったな、僕は(絶対にそれ以外の道を行かなければ)って。
こないだ、どっかで見たような男性が郵便配達しててさ。よーく考えたら、自分と同時期にバイトで配達してた男の子だったの。もう5、6年も前の事で、今や彼は準職員の制服を着てた。僕は一年足らずで喧嘩して辞めたから(よくやるよな)としか思わなかったけど、見方によっちゃあ(公務員へのウラ技)なのかもね。
僕は(同じ仕事を一生続ける)なんて思った事ないし、そういう執着で若いうちから目が死んでしまう人も見たから興味がないのね。だからって特に(転々と変えねば)などと意識してる訳でもないし、直感には敵わないからさー。
若い頃から「一生涯の仕事が決まってる」って人になると、話は別だ。単純にスゴイと思うし、ちょっとは羨ましい。だからって僕の作詞作曲を引き合いに出されれてもね、作詞歴が四半世紀になろうと所詮は趣味だ。毎晩2、3は必ず書くという時もあるし、すっかり放り出してる時期だってある。やりたくなったらやるのと、毎日定期的に継続する事は根本的に違う。
やっぱり、継続する力って侮れない。「ラスト・サ〇ライ」で、年配の大部屋俳優がキャスティングされたって話でも思った。それよりも身近な話題としては、友人というか知人のギターね。今や関西では無名とは言えない彼女、知り合った8年前は弾けなかったのよ。でも某大手出版社から本を出したプロモーションで、ラジオ番組に出演して弾き語りをしたのね。で、今度はCD作って東京までライブやりに来るの。
ギターあげた僕より全然うまいんだわー!
平成15年2月17日

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