2005年02月10日

69*昔ながらの

ku69-1.jpg
 僕は案外と食べ物に執着しないほうだけど、なぜかラーメンだけは決まった店に行く。
 いわゆるコッテリ系で、20代の頃は週に一度は食べていた気がする。僕らが「道場」と呼んでいたスタジオの近くにあって、バンド練習の帰りに必ず寄っていたのだ。日本を1カ月位離れた時、このラーメンが風呂や和食よりも恋しかった。
 30代を過ぎてからは、月1ペースに落としている。食べ終わった直後は胃が重くなって、何だか具合が悪くなった感じがするし。だけど風邪を引いたと思ったら、真っ先に食べに行くのだ。
 割と人それぞれ自己流の、風邪の治し方ってあるんじゃないかなぁ。僕の場合、ここのミソネギチャーシュー(+おろしニンニク&豆板醤)が引き始めに効くのだ。さらに熱い風呂に浸かって、布団で大汗かいて寝れば治る。一種の民間信仰かもね。
 まぁそんな訳で、風邪薬の代わりに今年初ラーメンを食べに浅草まで出た。なに、チャリで15分だ。
 コンクリの床が油まみれになっているようなラーメン屋ってのは、どこも独自のやり方を持っているよね。口頭注文の後払いだったり、食券の先渡しだったりさ。言葉にしてみれば大した事じゃないけど、実際その店によって決まりが違うから、初めてだと戸惑ってしまうもんだ。
 その日は馴染みじゃない客が多かった様子で、ことごとく客と店員のやり取りがギクシャクしててね。ここの店員は(常連基準の客あしらいだな)って思ったんだ、決め事を分かってる前提で接客してるって。つまりファミレス応接の対極だな。
 でもラーメン屋の、店ごとのルールって(常連が作るんだなー)って気がしたのよ。店が最初から決めてるんじゃなく、馴染みの客が店の雰囲気を出してゆくのね。店員の無駄のない手順を磨いてるのは、大多数の客の動きなんだわ。だから、その手順を破綻させる客が来ると微妙に間が合わない。
 大抵のラーメン屋は「味で勝負」って感じで、売り物以外のサービスは省略傾向だからね。この店に関しては、接客サービスを向上させる方針に転換したような印象もあるけど。スープも万人受けする味になってきたし、お冷や&おしぼりもセルフじゃなくなったし。
 だからって悪い筈がないんだけど、何か詰まらなくなってきた感じがするんだ。とはいえ、僕は常連を気取るほど執着してないので。ただ、門外漢に丁寧すぎる過剰サービスって鼻に付くんだよなぁ。電車とかのアナウンスにしても、分からない人間に気を遣いすぎだよ。消費者の意見なんて、真に受けてたら「イワンのば〇」になっちゃうぜ?
 自分が他所者の立ち位置だと、そりゃあ便利だし楽だよ。でも方向性が違うと思う。

 ラーメン食って胃を重たくして、またちょっと具合悪くなってチャリで帰る途中(そういえばプラモ屋があったな)と思い出したの。で、久々に寄ってみたら「閉店につき特売」の貼り紙でさ。いつも婆さん2人が店番してたもんな、こんな日が来ると思ってはいたが…。
 ホコリと一緒に山積みだった棚が、あらかた売り切れて空っぽでさ。何も買わずに帰るのも気が引けて、ガンプラのカタログでも買おうと思ったら婆さんが「あげるよ、お金を払ったら忘れちゃうからね」って。
 これを見るたび、この店のオバチャンを思い出してくれれば…。なんて殊勝な事を言われて素直に貰ったが、僕は知っているんだ。客が帰ると、買おうが買うまいが婆2人で悪態付き合うのを。大体、非売品の販促カタログに値段なんてないじゃんか。
 きっと今頃「ナァニが『今までお世話になりました』だよ、たまに来たぐらいでサ!」ぐらいは平気な顔で言っているだろう、その元気があれば店を畳んでも長生きするわな。
 だけど、あの駄菓子屋みたいな店じゃないと、ガンプラ買う気になれないんだ。

平成17年2月10日ku69-2.jpg


posted by tomsec at 23:46 | TrackBack(0) |  空想百景<61〜70> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック