カンクン。平均気温27℃で、一年の2/3が晴れている亜熱帯気候の土地だそうだ。
食事をしたおかげか、やっと息苦しさは感じなくなってきた。トニーに言わせれば「これでも真夏に比べれば過ごしやすい」という話で、八月の暑さに耐え切れずクーラーを買ったらしい。確かに、小さな窓が一つしかない部屋じゃキツイわなぁー。
トニーの部屋は八〜十畳の広さで、コンクリートの壁はターコイズ・ブルーに塗られている。その夏空のような、サンゴ礁の海のような鮮やかな色を見ていると、コンクリート独特の匂いさえ気にならない。材質的に湿気を吸収しやすいのか、日本で知ってるコンクリートの打ちっぱなしは湿気た空気が感じられる。この土地の湿度が低いせいかも知れないけど、その手の気持ち悪さがないので簡素ながら心地よい部屋だ。
部屋の間取りは縦長で、最奥から隣室の壁沿いにトニーのダブルベッドがある。まさか一緒に寝るのかと不安に駆られたが、僕の寝床はアマカ(ハンモック)だった。ベッド足元の壁に鉄のフックが埋め込まれてて、窓側にある同じものに差し渡して吊るすのだ。ちなみに2張りのアマカが吊るせるように、この部屋にはフック船長の右腕みたいにゴツイのが全部で3つ付いている。
窓は便所の換気用みたいにしか開かず、外から格子が嵌められてるのは防犯対策だろうか。窓側にはクーラーとラタンの棚があり、その一角に小物を置かせてもらった。ノートと本がいくつか、あとはT/Cなど色々だ。着替えなどはリュックに入れたまま片隅に。
トイレとシャワー室は入り口の脇にあり、仕切りになってる大きな布をめくると便座のない洋式の白磁の陶器がある。横のシャワーにはバスタブがなくて、まるで海水浴場のそれみたいだ。お湯も出ないし。ま、南国だから平気なんだけどね。
奥の壁半分が長方形に引っ込んでいて、ちょうど良い按配にトニーのクローゼット代わりになっている。でも床まで1mも深くなっているのが意味不明だ。彼はそこに板を置いて、下にはガラクタがひしめき合っている。ビデオテープとかインラインスケートの道具なんかが、文字通り放り込まれている状態。
インラインスケートは、僕もわざわざ持ってきていた。これがなければ半分の目方で済んだろうけど、トニーに何度も念を押されて仕方なく。というか僕も滑りたかったし、やはりスケート仲間がいないと面白みに欠けるって心情も解るから。
食事から帰って早速、アマカの寝心地を試してみることにした。今日からは、簡易ベッドかアマカが寝床になるのだ。ともかく初ハンモックで初シエスタ。ゆらゆら揺れる編み物に腰を降ろし、そっと両足を上げて横たわる。
不安定で心許ないのと、重心が腰に掛かってV字になるのが今ひとつ落ち着かない。言ってしまえば単なる木綿の網だ、自重で網目に締め付けられた気分はクモの餌。もぞもそと這い出して、内側に簡易ベッドの布団を敷いてみる。子供用みたく小さくて薄かったが構うものか、しかしメキシコで布団とはねえ。
今夜はどうしようかなー。簡易ベッドの寝心地と、どっちがましなんだろう?
2005年05月27日
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