2005年05月29日
【台湾の7日間('02.12/13〜20)】7日目・4 「浪費の欲求」
本屋の外に出ると、駅前の通りは制服姿の学生で賑やかだ。下校時刻にしちゃ遅すぎるけど、予備校帰りとかだろうか?
通りを渡ると楽器屋があって、のぞいてみたが暗いし品薄。カンクン(メキシコ)の楽器屋みたい。アメリカ製の某ギターは、日本での相場とほぼ一緒。物価が非常に安いのは、宿と食べ物だけだったりして。
込み合う歩道を歩き、学生達の流れに任せてると塾に入りそうになった。うへー、この子ら塾のハシゴか? 台湾の学生って大変だなあ、それとも日本だって同様なのかな。
暗い脇道を大通りへと抜けると、初日の夜に来た場所だった。たかが一週間しか経ってないのに、同じ眺めも違って見える。それだけ自分が馴染んだ、という事なのだろう。信号のない所で道路を横断するのも、だいぶ慣れたものだ。台湾の車は路上横断しても待っててくれるのが紳士的、でもクラクション鳴らすのが大好き。
横丁を入って、六合二路の夜市へと向かう。高雄の夜市は、屏東よりも大きい。広い道路を歩行者天国にして、飲食店以外にも様々な露店が軒を連ねている。
人だかりに目をやると、ロードローラーが車道のゴミを踏み潰していた。
その周りに立っているのは警備員ではなく警官で、よく見るとどうやら偽ブランド品を集めてグシャグシャにしているようだ。おそらく夜市に出回っていたコピー商品を取り締まり、その場で見せしめにしているのだろう。
僕の見る限り、露店に並ぶ貴金属の類いは縁日のイカサマ品と大差ない。いくら僕が買い物する気満々だからって、あまりにもチープだ。露店の裏に隠れたゲーセンで無駄遣い、と思ったらピコピコやるようなのは一台もない博打系の遊戯場。くあー、金使う場所ないじゃん!
道の両脇からは出店が迫り出して、中央は機車がビッシリ並んでいて分離帯のようだ。おかげ様で人が通るにも袖触れ合いまくり。そこにぐいぐい機車が入り込んできやがって、もう僕は気が立って目が三角。人込みはキライだ、早々に夜市を離れる。
高雄に戻ってから、空吹かししてすっ飛ばしてく車とか機車を何度か見かけた。他の町では、そんな乱暴な運転は一台も見なかったのに・・・。やはり高雄は肌に合わない。特にここの夜市、歌舞伎町みたく人を暴力的にする感じは消耗させられる。
露店の焼きソーセージを頬張り、別の小さな夜市(南華路夜市)に。細い路地に並んだ店は、どれも衣類とか装飾品ばかりを扱っている。いくら冬とはいえ、この気温でマフラーや手袋は気が早い。というか高雄がそんなに寒くなるの?
ただでさえ狭い横丁をワゴンで塞いでるのも腹立たしいが、そこをまたグリグリ押し通る機車にマジムカ。不快の連鎖に乗せられないよう、心の中で般若心経(ウソ)。先に行くと尻すぼみに暗くなり、市街の中心を走る民生一路に出た。目抜き通りなのに、街灯だけが明るい有り様。引き返すのも嫌だし、昼間と同じ道で大回りして帰途に。
なーんか寂れた感じ。店を開けているのは、茶店と小洒落た床屋ばかり。昼間の小汚い床屋が開いてたら髪を切ろうかと思ったりしたのだが、今風のなら日本に腐るほどある。これでは散財しようがないではないか、つまらん。
昼間は気が付かなかったのだけれど、高雄は区画によって店の傾向が集中している。
中山一路には、婚礼衣装の店が延々と並んでいた。ガラス戸を一歩入れば毛足の長いカーペット、だけど外(つまり歩道)には来客の靴が散乱。不用心というか往来の邪魔というか、変な風習。
他にも服飾系、パソコン系、車バイク系など、エリアごとに固まっている。浅草とか日本橋周辺のような、問屋街から発展した町なのだろうか。
宿の近くまで戻ってきてしまった。もう何でもいいから散財したーい!
昼に一服した小さな運動場には夜間照明が灯り、遠目にも大勢の人影が見えた。この時間で、夜市の次に活気があるのはここかもしれない。
客運の近くでゲーム屋を発見、喜々として入る。店内は日本と何一つ変わらない、中国語表記以外は。却って買い物欲の生殺し気分を味わい、その先の本&文具屋で無理やり買い物。ゲーム雑誌と高雄ウォーカー(無論どちらも中国語)。
なぜか2001年5月の創刊号と6月号だけしかなかった、高雄ウォーカー。地域情報雑誌なのに、一年半も前のを売るかね? って買っちゃったけど。日本の流通方式と違って返本できないのか、いまだ山積みだった。
角のコンビニを曲がると宿に着いてしまうので、必要以上に菓子とビールと明朝のパンを買い込む。更に屋台の呼び込みに引かれ、食いたくもないのに羊肉炒と台湾ビールを頼む。無駄遣いのラストチャンス! の意気込みも空しく、すぐに満腹。
引っ切りなしに電話が鳴るので、表で客引き同士の話に夢中のオバチャンに「電話だよー!」と声を張り上げる。そんな自分も含めた場末っぽさは、意外と“一人旅最後の一日”に相応しい感じがした。
店内に客はなく、青白い蛍光灯の明るさが侘しい。
宿に帰ると一階ロビーは真っ暗で、カウンター内で毛布を被っていた女性からキーを受け取った。
部屋は相変わらず、'70年代の日本の夏の夜。5階の窓から見下ろすと、今までいた屋台が姿を消して路地はひっそり閑としている。
明日の朝に必要な物以外はリュックに詰めて、TVをつけるとアナウンサーが中国語でニュースを読み上げていた。
何だったのだろう? この旅は。
(浪費の欲求−おわり)
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