2005年05月29日
【台湾の7日間('02.12/13〜20)】7日目・1 「高雄ふたたび」
雨音で目が覚めた。嘘だろー?!
ひたすら止んでくれる事を願いつつウトウト、11AMチェックアウト時には見事に薄日が射してきた。雨上がりの、空気がきれいな屏東。
火車站の窓口で、高雄までの切符を買う。この国のオバサンも、窓口で四の五の言って手間取らせる。どういう了見してるのかね、無駄に行列を延ばしてくれる。
2番線ホーム、台湾表記では2月台(そういえばカレンダーの曜日も日本と違ったな、確か漢数字だったような)。しかしホームの右側と左側の区別がないのは意地が悪い、というか誰もが判ってるというのが大前提になっているのだろう。
つまり人の移動が少ない土地だから、まったくの外部から来た人間の視点が考えられてないのだ。お客さんのほうで地元ルールに慣れてくれ、と。不便ではあるけれども、僕はこういう発想で成り立っている世の中はフェアだと思う。
先に着いていた、往松山と書かれた急行に乗っちゃうところだったんだけど。
雨上がりのせいか、気温がいつもより若干低めで湿度が高い。汗をかいて、そこから体が冷えてくる。
急行と違って、鈍行の車両は両開きの自動ドアだ。だから新型車両かといえば、さにあらず。ブレーキの度に車体がきしんで、ベニヤを割るような物凄い音を立てる。不安は感じるものの、旅先で山の手線みたいな列車に乗ったって面白くない。
地元の人は主に公共汽車を利用しているのか、火車站もそうだが車内も閑散としている。各駅とも運休のような静けさ。
そして、再び高雄に。
他と比べれば、高雄站の混雑は例外中の例外。建物も大きいし現代的だ。横に幹線道路を通す陸橋を建設していて、今は半分工事中ではあるが。
站を出ると(また来てしまった)という感じがした。初日に一泊しただけなのに。2日目の朝、自分の中のスイッチが入った時と変わらない眺めだ。でも、何というか「分かり切った町」という印象。
ロータリー右向こうの路地を抜けて初日と同じ道を辿り、懲りずに新世界大飯店を捜し歩くが、またも徒労に終わった。友人Nには「潰れた」と報告しよう。
ドブ川沿いに宿を捜しながら、新源旅社に向かって歩く。途中で何軒かあたってみたが決まらないまま、結局また新源の手前まで来てしまった。別に新源が不満なのではなく、ただ他の宿に泊まってみたかっただけだ。なので、敢えて同じブロックにある百星という別の宿に荷を下ろした。
自動ドアの前に机が出してあって、なぜか色とりどりのお供えで飾られている。本日の宿泊客にはステキな特典が? という訳ではなかったようだ。
値段は新源と同じ500元、でも掛け布団は暖かそうだ。エレベーター正面の505号室。そういえば、今までに泊まった部屋はどこも2階ばかりだった。窓の外は、路地を挟んで向かいのビルが丸見え。大ジャンプして、惜しいところで届かない位の距離だ。
下を見ると、宿の玄関の真上なのに歩道が見えない。歩道に張り出している屋根は、実はビルの一部だったのだと気が付いた。要するに、この部屋の5階下が机を置いた歩道なのだ。
うーん、変なの。
今日の宿も決まったし、気分的にも身軽になって外に出た。すると隣の高源旅館のガラス戸に“一泊400元”の文字が! くっ。見なかった事にして、それより土産物でも探しに行こう。
すっかり晴れて気温も上がったけれど、風がないし湿気が多いので汗が止まらない。余りそうな元を日本円に両替しようかと考えながら、あてどなくぶらぶら。
思いつきで適当に路地を縫って進むうち、市場のような建物に迷い込んだ。といっても、競りをやるような所ではない。卸売市場かな、だだっ広くて生臭い。
生鮮から乾物から、高雄の台所って感じだ。ここで見た黒犬はコウモリのような恐ろしい顔をしていた。単なる雑種かもしれない、でも(病気でマズルがもげちゃったのか)と考えて背筋が凍える。
線路と平行に延びる大通りに出て、百果汁(パッションフルーツ?)を飲んで休憩。お茶やジュースを出す、こういった小さな店が至る所にある。客の食い合いにならないのは、この暑さと湿気のおかげだ。水分補給をケチっていたら、脱水症状で倒れてしまう。
一服しながらガイドブックの詳細図を眺めてみる。目の前の大通りを、高雄站と逆に行けば川に出るようだ。日本統治時代に造成された人工の運河らしい。
ひとまず、その愛河まで行ってみよう。河沿いを少し上がれば、臺灣銀行もデパートもある。良さそうな土産物があれば買って、なければ日本円に戻してしまおう。
帰国してからだと、元は両替できない。明朝の便が早いので、高雄機場でも窓口は開いていないのだ。という事は、今日の3時がタイム・リミットだった。
高雄に着いてから、ずっと気になっていた事がある。それは百星で見た、お供えだ。
ホテルだけでなく商店からゲーセンから、街じゅうの店が競うように供え物を飾っている。そればかりか、あちこちでドラム缶に火を焚いてるのだ。この暑いのに、それに12月だからお盆でも正月でもない。
店先で飾り付けをしていた、知的な兄さんに訊いてみた。見かけによらず、英語が全然通じない。店内にいるカワイコちゃん達も話せないらしく、オバサンが相手をしてくれた。それで判ったのは、
月に2日、決まった日がある。
お祭りではないし、先祖の供養でもない。
しかし商売繁盛を祈願している。
相手は神様ではなく、ゴーストのようなもののようだ。
――という事だった。山盛りフルーツに長い線香差しまくり、神様専用の札束も山積みだ。慈鳳宮の供え物と同じに見えるんだけど、感じとしては酉の市で買う熊手のようなものなのかなぁ。
台湾の最後に面白いものが見れた。殺風景な路地の空気も華やいでくる。
(高雄ふたたび−おわり)
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