2005年05月29日
【台湾の7日間('02.12/13〜20)】6日目・3 「レイドバック老荘思想」
用もないのに火車站まで来た。ついでに高雄までの値段を見ておく。28元。高雄ほど都会じゃないからか、券売機はなくて切符は窓口で手売りのみ。
目の前は公共汽車のロータリーで、いろんな会社のいろんな公共汽車が行ったり来たりしている。車体の横に様々な広告が貼られていて、見ていて飽きない。
中でも、日本語で大きく“鬼洗い”と書かれた車体広告は笑った。それはジーンズの風合いを強調する文句で、日本ならさしづめ“HEAVY WASH”だろう。そうくるか。
最近は割合に聞かなくなったが、非常に混雑してる状態を「鬼っ混み」と言ったり、著しい物事の有り様を「鬼のように何々」と形容したりしていた。だから“鬼洗い”という広告は、日本で当時流行っていた若者言葉を上手に取り入れていた訳だ。で、僕も(そうくるか)と。
折角だから、それを写真に撮ろうと思いつく。交差点でカメラを構えて構図決め、するとなぜか“鬼洗い”はぷっつり来なくなった。意地張って小一時間も粘った挙句、3:30PMついに断念。空も西日になりかけてるし、あきらめて歩きだす。
そういえば、どうでもいいんだけど「鬼待ち」とは言わないよなぁ。
慈鳳宮の裏手は、車も人もまるで少ないレイドバックした雰囲気の道。もっさりした空気、なんかやっぱメヒコに似てる。
それにしてもこの夕方だよ、メヒコっぽいとも言えるし昔の東京でも当てはまる。だけど、どちらの夕方ともちょっとだけ違うんだよなぁー。
思わず立ち止まって、うっすらと染まった空を眺めた。すんごい普通であると同時に、今こうして囚われない心で夕空を見ていられる感覚の貴重さ。
不味いと判っていながら、なぜか檳榔を口に入れた。こうやって、人は檳榔の虜になってゆくのかもしれない。などと思ったそばから後悔させる味、癪なので我慢してゴリゴリかみ砕く。
味を無理やりたとえるならば、だしの素とロウ粘土と木工用ボンドだろうか。とにかく人間の口に合う代物ではない。舌がビリビリとしびれてきて、いっぱいに溜まった唾と一緒に吐き出すとアスファルトが赤黒く濡れた。
檳榔の習慣は、きっと台湾先住民から伝来したのだ。大陸からの渡来人が持ち込んだと考えるより、航海術を持っていた先住の一部族が南方由来の海洋民族だったに違いなかろう。詳しい資料を読んだ訳ではないから、実際はどうか知らないけど。
しかし、中国大陸からの移住が始まるよりも古い昔を想像してみるのは楽しい。
この場所が、密林だったり集落の外れだったりしたりした眺め。
いい加減ぶらぶら歩きにも疲れたので、店に入ってひと休みする事に。角に「老荘思想」という名の店がある。ゆったりした構えだし、店の名前も気に入った。
烏龍茶と一品頼んで軒先の席に腰をおろす。籐製の、低い椅子とテーブル。店内にも客はいない。
こんなにイイ感じなのに、なんで置いてある雑誌が「OUT DOOR 街頭」とか
「Cawaii!」なのかねぇ〜。 念のため説明すると、両方とも日本の若向けのファッション誌(の北京語版)だ。
なんといいますか、この店の雰囲気との外れ具合が僕には面白い。多分、台湾国内的には全然オシャレだろうし、日本でもB級の基準は人それぞれだから上手くいえないけど。
だからといって、この店に不満があるかと言えば全然ない。店員の気遣いが、きめ細やかなのだ。烏龍茶はティーポットで、予備のお湯が別に魔法瓶で付いてくる。
それと(ゆで豆みたいなものだろう)と思って“毛豆”という品を頼んだのだが、茹でて更にガーリックと黒コショウで炒めた料理だった。酒の肴にすると丁度良いのかもしれないが、お茶とあわせるには味が強すぎる。(失敗したな)と思っていると、若い店員が気付いていてお冷を注いでくれる。気を利かせて氷まで出してくれたので、それをほおばって烏龍茶を飲んだ。
何杯いれなおしても味が薄くならないのって、日本の茶葉と製法が違うだけなのか? それにしては美味すぎる、この烏龍茶。
夕闇が濃くなると、天井にトカゲが。あぁ、夏の夕刻。頭の中で、スチャダラパーの“I'll remember the summer sunset”という(「5th wheel 2 the coach」に入っていたが曲名忘れた)フレーズがエンドレス状態。なんか訳もなく感動して店を出る。
女主人に店名の由来を尋ると、特に意味はないと。老荘思想、って意味なくつける名前か?
この周辺にも、大旅社とか賓館の看板が多い。ウェストバッグから地図を出し、あの店と一緒に印をつけておく。また来る日が、いつか来るのか判らないが。
ネットカフェ「港都網」に寄って、パメラに会う。携帯の写真は不鮮明だったので、今度はカメラのほうで撮らせてもらった。
パメラにしろアンドリューにしろ、あだ名や洗礼名ではなかった。バリバリ台湾人なのに、本名がそれって奇妙な感じだ(失礼)。
とすると、香港スターって本名だったのか? ジャッキー陳にブルース李、ですか。いいんだけど。
(レイドバック老荘思想−おわり)
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