2005年05月29日
【台湾の7日間('02.12/13〜20)】6日目・2 「仮面の告白?」
人気のない、午後の路地。だらーんとした商店をのぞきながら台湾銀行へ行き、一万円分両替する。
担当のアンドリュー・チェン氏と雑談になり、妙に盛り上がってしまう。仕事そっちのけで良いのかぁ? 猛省を促されたり、著しく配慮を求められたりしないかと心配になる。が、こういう大らかな仕事ぶりは日本人も見習ったほうが面白い。
彼は日本のドラマを観るのが好きで、DVD買って最新作をチェックしてるから金がかかって仕方ないとか言っていた。そんなのCATVでも色々やってるのにな(字幕付きor吹き替えで、風間杜夫が主演してるようなのだけど)。
よく日本にも遊びに行くんだそうで、刺し身が大好きらしい。勢い余って、うっかり僕は「東京に来たときはガイドする」と口を滑らせてしまった。
「かわりに貴方が今度来た時は、休みの日には私の車で墾丁(Ken-ting)まで案内するよ」
「オー、タイシェーシェーニンレー!」
なーんて。よくよく考えてみれば、そういう旅行ってしたいと思わないんだよなぁ。人のお世話は、するのもされるのも気が重くなるので。そのくせノリだけは喜んでみせたりして御免ね、陳さん。
本日のレートは0,2784で、1万円が2,784元。
クソしたくなったので、進成賓館に戻る。銀行から目と鼻の先だ。
階段ですれ違った掃除のオバサン、ちょいと馴れ馴れしい感じ。部屋はドントディス
ターブで良かったのに、片付けちゃったのね。って、部屋まで付いてくんなっての。
入口に挟まって、何事か話し続けるオバサン。あのなー、こっちはそれどころじゃないんだって。ジェスチャー通じてんだろうに。早々に追い出して便上の人となる。
しきりに指で“房事”と書いて粘りやがったな、あのオバサン。中国語は判らないけど、大体の見当はついている。カワイコチャンの口利き役ならまだしも、しかしあのただならぬ色目は…。
(そっかぁー、オバサン自身がヤリたかったという線も有り得るよな。ま、タダならやってもいいか)
って、おいおい! ナニ考えてんだ俺は。
クソしたくなかったら、案外そういう事も起こり得たのか? パラレルな世界では、まさに今このベッドで肉弾戦か? うへぇ堪忍してほしいもんだ。脱糞しながら安堵のため息が。
でも。ものの弾みとはいえ(タダならオバサンとのSEXもOK)と考えてしまう自分は、現実に存在している僕自身なのだ。自分を聖人君子だと思っている訳ではなく、知らない自分が出て来た事が恐ろしかった。
一人で旅をしてる人は、寂しさを感じないのだろうか。
夜ごと繰り返される長く退屈な時間に、人恋しさが募らないのだろうか?
日常の中でなら、僕はむしろ一人で好きな事してるほうが好きなくらいだ。一人暮らししてた時だって、寂しく感じる夜は少なかった。
でも一人で出張して殺風景なビジネスホテルに行くと、たった一泊でも辛く感じる。異質な空気、知ってるものが何もない場所。
昼間なら、道行く人と話もするし動いているから気が紛れる。でも日が落ちると町は早々と静かになってしまうし、特に行く当てのない僕は手持ち無沙汰で部屋に戻るしかなかった。
そうだったのか。夜の寂しさを感じてない振りをしていただけで、僕はもう耐えられなかったのだ。
何かを決める時とか、寝るには早すぎる部屋で、話し相手が誰もいない事に何日も平然としているのは辛かったのだ。
僕は、掃除のオバサンでも構わない位、人恋しさに狂ってしまうのか。
一人で旅してみて、初めて判った事だった。知らない自分が、冗談のふりして顔をのぞかせていた。自分自身を逸脱する、孤独の底知れなさが怖くなる。
そういう人間に、一人旅は向かない。そう思った。
半日歩き回っただけで体がベタついて、Tシャツを着替えたくなる。シャワーを浴びて手早く洗濯、またロープに干す。あれ、一枚足りなくない?
よりによってアディダスの、去年買ってからまだ大して着てないやつが行方不明だ。いつ着ていつ干したか、ローテーションが思い出せなかった。小琉球の屋上で干したのは? いや、確か取り込んだ記憶があるような。昨夜あったのか、それすら心もとない有り様。
まさか今しがたの部屋清掃で盗まれた、とも考えにくい。とにかく一枚足りない事には変わりないし、買い足さないとローテーションが回らなくなる。頭を切り替えて買い物を楽しむ事に。
たかがTシャツ、気にするな! でもトホホ。
宿を出て、路地を奥に向かってみると別の路地に出た。そこから火車站のほうに歩いていると、ショーウィンドウにオモチャがいっぱい。しかも、妙に分かっちゃったりして。
これってフィギュア屋? 雑誌の広告では見た事があるけど、実際に目にするのは初めてだった。アニメのキャラ(ほとんど少女)が、精妙に立体化されている。最初は台湾製かと驚いたが、どれも輸入品のようだった。
店内は、懐かしい超合金の復刻版やガンプラの日本製品であふれ返っている。日本のアニメロボットだったら何でもいいのか? と呆れるような超マイナーな物まであって、それが“オタクがオタクである所以”なのかと複雑怪奇な気持ち。
知ってる僕も僕だけど。
(仮面の告白−おわり)
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