2005年05月29日

【台湾の7日間('02.12/13〜20)】4日目・3 「島巡りの続き」


2005052917c746db.jpg 花瓶岩と反対側の右手には、狭い岩場が見晴らし台になっている。
 見晴らし台に付き物とはいえ、なぜかコイン式双眼鏡。海の彼方に見えるとしても台湾本土だが、見たいか? いったい誰が、何のために?
 その先は、フェリー乗り場横の小さな漁港。なんだ、こっちのほうが宿から近道だったのね。
 見晴らし台の下は岩場だ。よっしゃ泳ぐか! と思ったけど止めておこう。カクさんに泳げる場所を訊いた時に、浮輪をプレゼントされそうになったからな。
 水温は問題なくても、島の波は引きが強いものだ。海水浴シーズンじゃないから、一人で流されたりしたらカクさんや島の人達に迷惑がかかる。考え過ぎだとしても、自分を過信しないに越した事はない。
 その代わり、リゾート読書。
 ちょうど良い所にプラスチックの白い椅子が積んであったのだ、ちょいと拝借して岩場に下ろす。ジーパンの裾をまくり上げ、脚だけ浸けて海水リフレクソロジー。足裏から悪いのが抜けてく感じ。
 3:30PM頃、読み終えると日が傾き始めていた。島の反対側まで夕陽を見に行く事にする。
 宿に寄って、フロントで8枚セットのポストカード購入。ひなびた温泉街にありそうな、いかにも観光写真的な王道路線。しかも冴えない名所ばかりでイカす、これで100元は調子が良すぎるけど。

 島を縦断する道路を、夕風浴びてゆっくりと上って行く。
 眺めが開けてアクセル全開にしたい気分、機車の加速が良いのだ。50tにしてはメーター140km/hまであるし、まさかと思ったら125ccだった。僕は車の免許しか取ってないので、本当に無免許運転だ。
 島の中央部まで来て、沿道に大判焼きを売る露店を発見。縁日の夜店そのものだ。
 やっぱり気になって引き返し、思わず買い食い。クリームと小倉、各1ヶ5元。隣で焼いているおやきも旨そうな匂いにつられて一枚、こちらは10元。後で食べる分を、茶色い紙袋に入れてもらう。
 坂をのぼり切ると、空と海が一望できる絶景が拡がった。ここは夕陽ケ丘、と勝手に命名。
 緑の斜面には、無数の墓。眺めが良い場所に奉る、そこに先祖への思いが感じられる。沖縄風の造りで色遣いは中華、そしてこの眺望。あの世ものんびりできそうだ。
 丘の彼方に、尖塔のようなシルエットが。見張り台?
 水平線の向こうは中国、有事の際は最前線になる島だ。夕暮れの甘い空気と、そんな現実。
 海まで下る坂に軍施設があり、ゲートに鉄条網と迷彩の軍人。見ないふりをして走り過ぎる、何ともいえない気持ち。

 下り切った海辺でおやつ、カードを書いてるうちにTシャツ一枚では寒くなってきた。
 気が付くと、頭上いちめんのうろこ雲! 寝転んで、しばし見惚れる。子供のころ以来か? 雲に見入ったのは。
 夕陽ケ丘のてっぺんまで戻り、路肩の休憩所で一服。周囲の家々は林邊同様、緋色のレンガと瓦屋根で囲むように建てられた客家様式。くすんだ壁のせいか、京城市街のしもたやに似ている。かさかさとした、冬場の乾いた町の感じ。って、何を見ても知ってる場所を思い出す僕。
 宿へと走る、長い下り坂から見下ろす中学校の放課後。小高い丘や野道の木陰に、ぽつねんと建つ廟。なんというか、どこか知らない筈の場所に帰りたくなる。

 小琉球大飯店に戻ると、フロントには超可愛い女のコがー!
 帰国後に友人Nと話していたら、泊まっていないのに彼もしっかりチェック入れていた事が判明。妙に盛り上がった。それはともかく。
 カワイコちゃんは、僕にレンタバイクを延長するかと訊いてきた。追加100元で明日いっぱい使える、でも宿のMTB風チャリはタダで使えるという。機車は返却する事に。
 前後サスペンション付きのチャリだ、試し乗りを兼ねて港周辺の中心部を探索に。ところがどっこい、雨ざらしで手入れしてないからギアがダメになってやんの。坂でフーフー息上がる、そして大汗。
 この島は、他に比べると昼間でも活気がある。夜も、他の町と変わりない賑やかさだ。だけど範囲が狭いので道を覚えるのは難しくない。賑わいを過ぎて横丁を折れると、塀と庭木に囲まれて真夜中の空気だ。
 人気のない裏通りに入り込むのは、安っぽい危険を求めての事ではない。ただ、知らない筈なのに懐かしい夜があるからだった。こんなに暗い道なんて、子供の頃にも通った事があったかどうか。
 そんな事より、今も心は変わっちゃいなかったのだと気が付いた。台湾に来てから、僕は何度も子供心に戻っていたのだった。何げない日常の匂いや、夕暮れ時の光景とか午前中の空気で。
 結局は特別な行動ではなく、ありきたりな中にある澄んだ感覚を取り戻したいのかもしれない。

 自転車を宿の前に戻し、向かいの店に入って夕飯にする。
 羊の肉燥飯とギョーザで、70元と50元。林邊の肉燥飯はそぼろごはんだったのに、ここでは青菜と羊肉の炒めかけゴハンだ。値段の割に量は多いし、ギョーザも山盛りの茹でギョーザで大満足。
 店の若いのが「ありがとう」とか「おいしい」とか、簡単な日本語を知っていた。宿のカワイコチャンも「ちょっと待って」とか言ってたし、かなり日本人の旅行者が来ているのだろう。
 セブンイレブンで買い物。店員が明らかに僕をマークしている。挙動不審かなぁ?
 風呂でヒゲそって、残り湯で脱いだ服を洗濯。屋上に出て、昼の分と交替。階段を下りようとした時、出入口で従業員のコとバッタリ! あとから階段にカギをかける音が聞こえたけど、挙動不審だったか?
 あのコ、昼にも屋上で見かけたけど、まさかボイラー室の隣の仏壇みたいな部屋の奥で寝起きしてるのだろうか。だとしたら、暑いしうるさいしで大変だろうな。

 虫の音を聞きながら、部屋でビール飲んで日記とポストカード書き。CATVのチャンネル数は、いよいよ少ない。窓から見える町の賑わいも、9時にはすっかり静かになった。
 時間を持て余す。

(島巡りの続き−おわり)
posted by tomsec at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾の7日間('02.12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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