2005年05月29日
【台湾の7日間('02.12/13〜20)】3日目・1 「好日」
林邊の順仁旅社。初日に高雄で泊まった新源大旅社と、ついつい比べてしまう。
シャワーはすぐ水になってしまう、浴槽がない。ドライヤーはともかく、トイレ紙までもない。言えば出してくれるのだろう、でも万一のために1ロール持参してたのが思わず役に立った。
窓は開かないように打ち付けてあり、ひょっとして連れ込み旅館? って感じ。肝心の(?)エロCATVも映らないのに。
その代わりなのか、冷房が付いているのは新源より良い。にしても、寒くて夜中に何度も目が覚めてしまって逆に毛布が欲しいくらいだった。火車站の汽笛もボーボーうるさいし。
やはり連泊にしなけりゃ良かった、はあー。
朝TVつけたまま、北京語を流しっぱなしにして11:30AMまでまどろむ。だるいっす。
さすがに腹が減って、重い頭で昨日の茶店へ行って旨い飯屋を尋ねる(昨晩の店は閉まっていた)。
店の女のコは、店頭の脇でこねていた白いかたまりを指した。大きい白玉だんご? 自分達の賄い用なのだと思うけど、勧められるまま注文する。温圓、文字通り「温かい団子状のもの」という意味。
出来上がるまで飲み物でも、と思って「お勧めを」と頼んだらタピオカ入りアイスティーが出てきた。
茶店の飲み物は、ゼリーみたいに封をしたプラスチックのカップで出される。ストローを上から突き刺して飲むのだ。店頭に車を横付けして、乗ったまま買う人が多いからだろうか。
しかし透けて見える黒いタピオカは、あんまり勧められたくないものだ。太いストローから、ニョロンニョロンと入ってくる喉越しも。
女児2人が寄ってきたので、適当にかまってやる。相手が図に乗らない間合いで。
裏庭に出て、ひなたぼっこしつつ一服。と思ったら宿にライターを忘れてきた。
そうこうするうち温圓ができて食す。器に熱い汁と大きな白玉、切る手間を省いた麺の原料みたいですなあ。すっかり満腹、飲み物と併せて60元を払う。そのまま、店の女のコと兄きと世間話。
思い出して、2人に「ポストカード買える店と、手近な公園を教えて」と尋ねたら、英語の達者な女のコを連れてきた。カードはどこにもないそうで、逆に「何で要るのか」と訊かれ説明に窮する。
兄きに「何枚いるんだ」と聞かれ「4枚ほど」と答えると、官製ハガキを持ってきてくれた。昨日、機車(原チャリ)で宿まで送ってくれた人だ。今日も公園まで送ってくれるという。温情。
そしてまたもや名産果実の蓮霧ひと山、更に今日はバナナも一房持たされた。んー、何なんだ僕は? 宿に“貢がれ果物”を置いてくるついでにライターも取ってくるとしよう。
順仁のロビーでは、一族が集まって食事していた。涸れた姐御衆と旦那と青年と子供。宿の老主人は、バアサンより上手な日本語を話した。宿の子にバナナを分けてやる。
で、兄ちゃんの機車に2ケツで河濱公園へ。といっても、大きさからして125ccっぽい。
町中で見かけるのは皆このサイズだが、スピードは非常に遅い。ママチャリでだって追い抜ける程度、兄きの場合は後ろに重いの乗っけてるから余計にノロノロ。
寺前の商店街を抜けると空が広くなり、人も車も機車もいなくなった。天気は上々。
河濱公園は、親林公園と曖昧にくっついている。川に沿って生えてる木を少し整えた感じか。
川の堤防にあがると、多摩川の土手そっくりで妙な気分になる。具体的には、そっくりそのまま谷保のキャンプ練習場付近。しかし河川敷は雑草のびのび、川向こうはヤシの木もりもりで大違い。
川幅は広いけれど、草の勢いに押されて流れが淀んでいる。岸辺の粗末な掘っ建て小屋には、一曹の小舟がもやってあった。風情は、まるで時代劇の渡し舟。
戻って親林公園を散策。途中には点々と、どうしようもないオブジェ風の物体が。なんだか風光明媚な東京近郊の間抜けさ、ほのぼのする。幼稚園が近いのか、母子の集団に怪しい目で見られて退散。
ベンチで読書、気づけば夕方。
5PMくらいか。なーんか日本の夏と変わらないなー、海外ひとり旅なのに。何しに来たんだ? と一瞬自問自答するも、のんびりしに来たのだった。だから、これでいいのだ。だよな。
12月にして初夏を味わう、心意気っていうか心の粋ってやつよ。日焼けした肌の匂い、うっすらと色付いた空。この時間特有の、ゆるーい空気! この、まったりとする以外ないシアワセ。
なんでだか胸がしめつけられる、堪らない気持ちになる夢のような時間。
夕涼みなのか、そぞろ歩く人が増えてくる。日本だったらヤキソバとか釣り餌売ってそうな小屋から、中国語のカラオケが響きいてきた。さっきまで誰もいなかったのに、軽トラの出店にも人が集まってる。
好々爺が年端も行かない孫娘に甘いものを買ってやり、一仕事終えた若夫婦が軽い食事を楽しむ。人々の顔は、どれも朗らかだ。自分まで、この場にいる全員と昔なじみのような気がしてきた。
うろつく犬も、増えてきた。
そうそう、犬は本当に至る所どこにでもいる。日なたで寝てたり、車道の真ん中で警笛鳴らされてたりして。なぜか猫は見当たらなくて、彼らの分まで自由気ままに暮らしている様子。
人が近づくと、すーっと離れて行ってしまう。人慣れしてない犬、というのも珍しい気がするけど。
ほとんどが黒い犬で、ノラでも飼いでも汚すぎて触れない位だ。高雄市街の自由犬は、見事な程まだらハゲばかりだった。
林邊では昨夜、青信号で渡る真面目な犬を見た。
(好日−おわり)
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