この旅から10年、経ってしまいました。
ずっと僕は(また行こう)と思いながらも、ついぞ果たせぬままです。
今度はもう少しスペイン語を覚えて、ダンスも踊れるようになって、いくらかマシな格好で、そしたら・・・。なぁんて、再びトニーやエドベン達と過ごすカンクンの日々を思い描いて、何も実現しないまま機を逸し続けています。
エドベンは綺麗な女性と結婚し、今はアメリカン航空へと転職しました。
トニーはロサンゼルスの学校で教えていて、洒落たスポーツカーを乗り回しているようです。
ディエゴやジョアンナ達も見違えるような大人になっているだろうし、グラシエラやビアネイも引っ越してしまったでしょうし、ヘセラだって空港で働いている大学生な訳がありません。でも街並みだけは、あんまり変わっていないような気がします。
そんな相変わらずなセントロを抜けてメルカドを見やり、懐かしいカーサ・ブランカ〈白い家〉の前に立つ自分の姿を、何度も想像してみました。しかし気が付けば、もう見知った顔はママ達しかいないでしょう。それでも僕は扉の向こうに呼びかけて、ママに挨拶が伝われば好いと思います。
あの日々を思い返す毎に、トニーの部屋に居候していただけの僕に食事や洗濯をしてくれてたママへの、感謝の気持ちが伝えきれなかったような気がして・・・。
もちろん、エドベンとトニーがいなければ有り得ない旅でした。決して旅先での無茶は望んでいなかったのに、毎日が思いがけない体験の連続となったのも、それらを何事もなく笑って済ませていられるのも、本当に2人のおかげなのです。
あの頃か後に、日本では若者が無謀な海外旅行をする風潮がありました。僕の場合は、現地に精通するエドベンと旅慣れたトニーがいてくれたからこその奇跡でした。危ない橋など渡らない僕にとっては、事前にトニーと交わした「僕も行っていい?」という冗談半分の約束が今でも信じられない位です。
あの時、普段なら言わない台詞を口走った自分に。そして本当に行く準備を始めた自分に・・・!
最初にこの旅の記録を書き始めたのは、帰国して半年も経たない内でした。現地では日記をつけていたので、それと写真を頼りに記憶のすべてを洩らさず綴っていきました。
それは自分のための忘備録だったので、友人に読んでもらうために2度の推敲を重ねた第3稿が、この「メキシコ旅情」の原文になっています。そこから更に削ぎ落として連載形式で更新を重ねたのですが、いま思えば(まだ必要ない文章が多かったな)という感じがあります。
たとえばガイドブックみたいに現地の物価や治安などの情報を中心に据えるか、あるいは毎日のアクシデントを面白おかしい読み物にするか、見聞録のような情景の描写を丁寧に書くかといった基本姿勢が曖昧な内容になってしまっている気がするのです。また、文章のテンポも定まっていない点にも力量不足を実感しています。
それでも、実際を誇張したり事実に反すると感じるような事は書いていません。すべては時系列どおりに、僕が体験したままの現実です。ただ、部分的に客観的な情報を補足する目的で参考にした資料と事柄については、各話の末尾に記載しています。
ちなみに、僕が遭遇した月蝕に関しては自分でも夢だったのではと一抹の不安を抱いていたのですが、下記のURLで実際に起こっていたのだと確認しました。こうして見ると、僕がキューバに行くまでのメキシコ滞在期間は、月が近付いて遠のいて赤道を通過してゆく動きの中にピッタリ当てはまっていて面白い気もします。
とにかく、読んでくださった方々が楽しんで戴けたのなら何より嬉しく思います。
Hasta la vista...
メキシコ(ユカタン半島)は日本時間では約半日前になります
1996年9月の天文現象
9 月 25.8 11:-- 月の距離が最遠(40万5739km,視直径29'28″)
13 金 0.2 08:07 ●新月
19 木 6.2 05:32 月と小惑星ベスタが最接近(03°02'0)
25 水 12.2 07:-- 月の距離が最近(36万3059km,視直径32'54″)
27 金 14.2 仲秋の名月
01:12 月が赤道通過,北半球へ
11:51 ○満月(ヨーロッパ,北アメリカ方面で皆既月食)
13:21 月が土星の北03°08'.1を通る
1996年10月の天文現象
7 月 24.2 03:-- 月の距離が最遠(40万4797km,視直径29'32″)
11 金 28.2 05:48 月が赤道通過,南半球へ
12 土 29.2 23:14 ●新月(ヨーロッパ方面で部分日食)
22 火 9.5 18:-- 月の距離が最近(36万8355km,視直径32'26″)
資料提供 白河天体観測所
出典元・アストロアーツhttp://www.astroarts.co.jp/index-j.html
AstroArts >> 星空ガイド >> 「9月の天文現象カレンダー」
2006年12月12日
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