2008年01月15日

【'05台湾×2】34/休養館のフジタさん

 六合夜市の晩ゴハン後、食休みに休養館(マッサージ店)に入りました。
 夜市の屋台店は、シャッターを下ろした店舗の前に露店を出しているのですが、そこは営業中の店内だけでなく外までマッサージ椅子を並べて大繁盛してました。
 それで差配役のオバサンに1時間600元の全身フルコースを頼むと、いかにも面倒臭そうな顔をしたんです。
 その瞬間、アツイ視線が。
「私を指名しなさい!」
 あ、日本語だ。
「すぐ終わりますから、待ってなさい」
 パッと僕に目を合わせてきたのは、奥で別の客をマッサージしていたオジサンでした。
 勝手に仕切られ、声を荒げる差配オバサンを説き伏せ・・・・・・というか相手してる客を半分そっちのけで、彼女を言い負かして僕を自分の客扱い。
 そんなやり取りからして、百戦錬磨のプロっぽい。


 おそらく差配オバサンが経営者で、雇われマッサージ師のオジサンは歩合給で働いているのではないでしょうか。
 だから彼は、他の人に回されないよう「自分の客だ」と言い張って先手を打ったのではないかと。
 実際、彼はマッサージ中に何度も「もし次に来るなら、僕はここにいますから指差してください」と言っていましたからね。
 指名しなければ、手が空いてる順に客を割り当てる決まりになっているようでした。


 百戦錬磨のオジサン(日本名フジタさん)は、70代だけに多少あやふやな日本語の使い手でした。
 しきりに「日本語が話せて嬉しいです」と言っていたから、もしかしたら高額な客だからという理由で僕を自分の客に取った訳ではなかったのかもしれません。
 そういう訳で、マッサージ中ずっと話しかけられてましたが。
 だけどこっちは頭の中なんて真っ白状態になっちゃってるから、会話するのも一苦労でした。
 途中で「休憩しましょう」と言われて、2人で一服していたら他のマッサージ師に何か言われてました。これは中国語の口調がきついせいではなく、表情からして「さっさとやりな!」とか文句つけられてたのだと思います。
 それをいなす余裕というか老練さも、場数を踏んでる感じのフジタさん。
 ちなみに「これは学校や資格があるのですか」と訊いたら。
「ないです」
 打てば響くような即答っぷりに、思わず笑ってしまいました。


 ところで、フジタさんとの会話で気になった点があったんですね。
 それは、他のアジア人に対して差別的な傾向がみられたからなんです(コオ老人にも若干感じられたのですが)。
 本人達は気にも留めずに口にするので、それはきっと彼らが日本語で教育を受けた時代の名残なのでしょう。
 まるで(僕らは日本人同士だからなぁ)と言わんばかりの口調で、同じ台湾人さえも格下扱いするような物言いで話しかけてくるのでした。
 当時の日本が「支配ではなく統治をした」と美文調に語られる歴史を、素直に受け止められなくなってしまいます。
 過去は今の感覚で測れない事ですが、やはり日本人は第二国民という意識で台湾人と接していたのか。
 そう思ってしまうのは、刹那いものがあります。


「貴方は結婚してないのですか?」
 唐突に、フジタさんは僕に尋ねました。
「台湾では『早く結婚しろ』とうるさく言われるが、最近は晩婚化で男性の財力に対して女性は厳しいから、大陸や越南やミャンマーから女性が入ってくるんです」
 確かに僕も(フィリピン系の女性が目立って増えたな)とは感じていたし、たまに「越南新娘○○○−○○○○(電話番号)」という落書きも見かけるようになりました。それにコールガール的な広告でも、越南新娘の四字熟語は普通に載っています。
 そういえばコオ老人の家にも、若くはないけどタイ人の家政婦さんがいますし・・・・・・。


「大陸は、昔『シナ』と言ったよ、知ってますか? シナ」
 そう話す時、フジタさんは日本学校時代の心に戻っていたのですよね。
 あの頃の空気が言葉の端々に見えるたび、僕は複雑な思いにとらわれてしまいました。
 英語で言うチャイナだと分かっていても、今の教育を受けた僕には。
posted by tomsec at 19:25| Comment(2) | '05台湾×2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「私を指名しなさい!!」
そういう風に言われたら、
なんとなく特別なもの感じちゃうかもしれません。
あぁぁぁ何につけそういう傾向あるかもなぁぁぁ。
Posted by at 2008年01月17日 08:05
え、アナタも?
奇遇ですねー、実は僕もです。

というか、そこで「いやです!」と返せる人がいたらスゴイと思うなぁ。
たとえば、ですが。
ラーメン食べに行って「タンメンにしなさい!」って言われても。
あ、つけめんだったら断るかもなぁ。
Posted by tom at 2008年01月17日 17:08